バスの車窓から、大好きな二人へ
大阪発高知行きのバスに揺られている。
「交換日記しない?」
と切り出したのは私だ。
私たち3人は同い年で、21歳の大学4年生。
私は大学を2年間休学しているんだけれど、二人はストレートで進級し4年生だ。
初夏。
大阪は、高知とはまた違う暑さで、コンクリートからムンとした暑さを感じた。
大阪駅周辺、12時。
バスに乗るまで時間があったので、少し散策。
デートするカップル、観光する外国人、テラスでランチ中のサラリーマン。
大きなビルに囲まれた街。
ビルの前には、ベンチに腰掛ける一人の女性がいた。
前髪をみっちり止め丁寧に髪を束ねたスーツ姿の彼女は、
小さなノートを手に、座っていた。
ノートを見ては顔をあげ、何かをブツブツと、小さな、小さな声で唱えている模様。
世は就職活動だ。
私以外の二人は、今年で大学を卒業する予定だ。(あくまで、予定。)
二人に出会ったのは、四ヶ月前、学生向けの合宿でのことだった。
なんだかとても意気投合した。
二人は、自己主張が激しいわけではないのだが、たまに口を開き”わたし”を話す。強い意志を感じる。
私はそんな二人に惹かれた。
自分に向き合い、自分の人生を自分で生きようとする姿に、惹かれたのだと思う。
大学を休学している私は、まだ就職活動をしたことがない。
大学の友人から聞いた話によると、「人によると、エントリーシートを100社100枚書いたりする」らしい。
一年前、先輩は「もう、会社に合わせてマスクをかけてる学生ばかりだよ」と言っていた。
マスクをかけたわたしは、本当の”わたし”か。
二人は、「就活だからってスーツを着たくない」と言っていた。
二人は、”わたしがわたしであること”を止めない。
そんな二人を、今この瞬間を、わたしがわたしを生きようとしていることを。
残したいと思った。残さないとと思った。
「交換日記しない?」
「書きたい!」
「やりたい!ふふふ」
「投稿したよ!」
「超いい」
「すてき」
「いってらっしゃい」
なんて心がほっこりするんだろう。交換日記を思いついた5日前の私を褒めよう。
私を運ぶバスは高知県へ入った。
車窓から見える、梅雨はどこへ行ったのかとも言えるような空は、私の心にハッピーを注ぐ。
帰高後は、打ち合わせが一件。その後大学の先生との面談が一件。
二人は、どんな今日を生きているのだろう。
わたしは、高知でわたしを生きることを続けようと思う。
そう思わせてくれる仲間がいる。
愛梨、馬場ちゃん、いつもありがとう。これからもよろしくね。
writer みう